HPウェイ

HPウェイ - シリコンバレーの夜明け (日経ビジネス人文庫)

HPウェイ - シリコンバレーの夜明け (日経ビジネス人文庫)

ヒューレット・パッカード創立者の一人であるデービッド・パッカード自身の手によるHP成長の記録です。HPといえば、創業者二人がこの世を去って久しい今、EDSを買収するなどサービス事業にもてこ入れを図り、総合ITベンダーになろうとしていると言われていますが、本書を読むと、HPの出自があくまで計測機器メーカーとしてのハードウェア製造業にあることが理解できます。産業の変化に伴って業態を変えていく様子は、元々は計器やパンチカードを作っていたIBMの成長過程と類似しているように思えました。(1999年に、HPは計測機器・デバイス事業をアジレント・テクノロジーとして、ITベンダーとしてのHPから分離しています。)「ゴーイング・コンサーン」という言葉に改めて思いを致した次第です。「我が社のDNAだ」などと言って特定の業種・製品にしがみついている企業の先行きは暗いのかもしれません。

ところで、この本には目立った失敗例が出てきません。基本的にうまくいった話ばかりです。現役HP社員が読むことを念頭に置いて、単なる回顧録ではなく創業者からのメッセージとして、パッカードが本書をHPにおけるバイブル的な存在として位置づけようとしたのではないかと思います。読んだ社員は偉大なる創業者に対して誇りを持つとともに、マインドの面で大きな影響を受けるたことでしょう。
順序が逆になりますが、自分はしばらく前に前CEOであるカーリー・フィオリーナの自伝を読んだことがあるのですが、その中でフィオリーナが、創業者一族と「HPウェイ」がしがらみとなって思ったように改革を進めることができず、志半ばでHPを去ることになったと恨み節を述べていたことを思い出します。創業者が偉大すぎることも企業にとっては難しい課題ですね。一昨年に「松下」の名前を社名から取り外したパナソニック・グループでも、決定に当たっては並々ならぬ苦労があったのではないかと想像します。

私はこうして受付からCEOになった

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道をひらく

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