わかりやすいプレゼンテーションについて

先日、修論審査の公聴会が開かれ、無事修了できることになりました。

ちょうどいい機会なので、自らの失敗に対する反省も込めて、今までインターンや大学で学生のするプレゼンテーションを見てきて、「べからず集」として思いつくことをいくつか書いてみます。あくまで、私にとってわかりやすいプレゼンテーションということでしかないので、そこは割り引いて読んでいただけるとありがたいです。

[図|表]中の重要な値は強調する

仮に、ある計測結果が30〜50の間で値をとったとして、それをグラフで図示することを考えます。その時に、ある条件を境にして値が40を越えたことが重要だとします。例えば、ある品質基準が40という値を境にクラス分けされているような場合です。その時に、ただ漫然と値をプロットしただけの図だと非常に分かりにくいものです。40のところに矢印を入れるなり、40を越えた点に対応するx軸の値を強調するべきではないかと思います。
特に、レジュメとしてPowerPointの縮刷版しか配布していないような場合は、講演者が「40」という値を話している部分を耳で聞き逃してしまうと、聞いている人はわけが分からなくなってしまうかもしれません。

1つの図ですべてを説明しようとしない

1つの図で、複数のポイントを説明しようとすると、分かりにくいです。話を聞いている人は、まとめや導入のスライドを除くと、1枚のスライドには1つの話題が対応しているものと、無意識のうちに思っているはずです。それが、1つの図に複数の話題を押し込んでしまうと、話が次に移るタイミングが分かりづらいため、前後の話が混ざってしまって分かりにくく感じます。
2つのことを説明したいのであれば、横着せずに、同じ手法やプロトコルについて説明した図であっても、丁寧に2つに分割するべきです。そして、それぞれ強調されるべき点が、されるべくして強調されているような図を用意する必要があると思います。

図中で言及する可能性のある点は(言葉で)呼びやすいように工夫する

主に、ネットワーク図のようなものを想定しています。聴講者にとって、スクリーンに投影された図をレーザポインタなどで指し示して「このノードとこのノードが、このノードに対して・・・」という感じで説明されてしまうと、非常に分かりにくいものです。というのは、会場からはスクリーンが十分に見えない場合もあるので、聴講者の中には、スクリーンではなく手元のPowerPointの配布資料を読みながら話を聞いている人がいます。その人たちにとって、遠くのスクリーンで右往左往するポインタを目で追うのは至難の業です。
どうすればいいかというと、単純な解決策としては、図中の配置に気を配るということです。図中のノードになんらかの規則性を持たせてやることで、「一番上のノードから、右端のノードに対して・・・」というように、「この」や「あれ」だけの説明よりは、多少わかりやすく説明する手助けになります。ただし、この方法も図中のノード数が多くなってくると、「上から何番目」という説明は分かりにくくなってしまいます。
そこで、相対アドレスの代わりに絶対アドレスを用いるという方法があります。ノードにAとかBという記号を振ってしまうのです。すると、「上からn番目」という説明を目で追っている人が、順番を数え間違えて誤解する心配もなくなりますし、スライド上に解説上のポイントを記述する場合も容易になるというメリットがあります。もっとも、この方法でもノード数が極端に多いと記号が増えすぎてゴチャゴチャする上に、探しにくくなるという問題があります。
ただ、図が複雑になりすぎるときは、上で書いたように、複数のポイントを1つの図に押し込んでしまっていることが多いような気がします。したがって、図をポイントごとに分割した上で、言葉で指示しやすいように工夫すると、図の説明は、かなりわかりやすいものになるような気がします。

スライドの切り替え前に一言説明する

これは、ある講義で先生から教わったことなのですが、効果が高いと思います。たとえば、提案手法を説明した後で評価実験の結果についての説明に移るとします。その時に、何も言わずにパッとスライドを切り替えてしまうと、聞いている人は混乱しがちです。一言、「次に評価実験の結果について説明します」と断ってからスライドを切り替えるだけで、聞いている方も頭を切り替える準備ができるので、わかりやすいプレゼンテーションになるはずです。

スライドに文章を書かない

ものの本にも書かれていることだと思いますが、スライドに、「この実験では・・・・・となり、・・・・が分かった。」というような、文章としての文字情報を書くべきではありません。というのは、文章のようなものを書いてしまうと、聴衆が文章を読んでしまい、講演者が喋っている話を聞かなくなります。また、文章になるとポイントが分かりづらいという問題もあります。箇条書きなどを適宜利用することは、完全な形の文を使わずに、言いたいことをまとめるのに役立ちます。
配布資料には、文章が書かれていた方がわかりやすい場合もあると思います。その場合は配布資料としての利便性を確保したいのであれば、発表用の資料とは別に資料を作成すべきです。資料を2つ作るのは手間がかかる、という講演者の都合を聴衆に押し付けるべきではないと思います。

重要(決断)ポイントをアニメで表示させない

あるスライドの重要部分をアニメーションにしておき、説明が途中まで進んだところで、はじめて重要部分を登場させる方法は好ましくありません。具体的には、スライドの上半分に、前提となる話題(実験条件など)を表示しておいて、それを説明した後で、最後に下半分に結果データをアニメーションでフェードインさせるというようなデザインについての問題です。*1
言わずもがなですが、問題は2つあって、結論が分かりづらい、ということと、一番重要な部分である結論の表示時間が短くなってしまうというものです。結果を印象づけるために表示するのを後出しにしたい場合は、同じスライドでそれをするよりも、スライドの切り替えを利用する方が、より適切です。

*1:なお、「アニメを使うと、印刷時に他の要素の影に入ってしまうので、アニメを使うべきではない」という話がありますが、それとは別の問題です。「スライドに文章を書かない」というのと同じで、テスト印刷で出力を確認した上で、問題があれば印刷用の資料を別に作れば済む話です。